第62号(92.11.10)


第五回『名酒を楽しむ集い』顛末記

 すぐ近くの里山まですっかり紅葉して、まさに山装うです。週間天気予報には、雪だるまのマークが現れるようになりましたが、長い眠りに入る前のほんのひと時のきらめきでしょうか・・・。

 さて、今回の富田通信は先日の『名酒を楽しむ集い』の様子を、集いに参加していただいた篠田次郎先生のとっても面白いお話しを中心にご紹介することにいたします。

名酒を楽しむ集いの酒と料理

 10月24日の午後6時30分から、新庄市のつたや本店で東京や仙台からの参加者も交えて、和気あいあいと「名酒を楽しむ集い」を行ないましたが、その時の出品酒と、つたや本店さんの素晴らしい日本料理を先ずご紹介しましょう。

 亀の井・くどき上手二年古酒
 麓 井・金賞受賞酒二年古酒
 出羽桜・一路五年古酒
 出羽桜・大吟醸五年古酒
 冨 士・古酒屋の
     ひとりよがり六年古酒

☆蔵元協賛酒

 亀の井・くどき上手
 出羽桜・桜花吟醸本生
 冨 士・庄内誉本生
 最上川・吟醸酒
 麓 井・純米圓
     麓井仕込み水


 料理

  一.珍味 ○若鳥砂肝このわた和へ
       ○鮎親子和へ
       ○滑子剥蕎こうじ漬
  一.松茸土びんむし
  一.鮎化粧焼
  一.鯛ちり徳利蒸し
  一.鯉鉄砂作り
     割ポンス、薬味
  一.鴨ホワグラ・ワイン蒸し
     黄味酢
  一.蓬蕎麦
     山芋とろろかけ

以上

 宴の終わりには、料理はもちろんのこと、用意した酒の大半が皆の腹の中に収まっていました。あぁ〜、うまかった!!
 さて続いて篠田先生のお話しをどうぞ。


篠田次郎先生のお話し(私の要約です。あしからず)
  今日は、「古酒」と「くらべ飲み」についてお話ししたいと思います。

古酒について

 日本酒には、もともと古酒にして楽しむという  考え方はありませんでした。せいぜい今年作った新 酒に、前の年に作った古酒を混ぜて酒の味を調節す るといったぐらいです。

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古酒が市場に現れたのは、そんなに古い話ではございません。今日のように二年から六年もの古酒をそろえて飲むなどということは、今までも無かったことですし、今後も無いことでしょう。これは壮大な実験です。

 こんなことを言っては富田酒店に悪いのですが、ひょっとしたら、今ここに並んでいる酒は、富田酒店で売れなかった酒じゃないかなと、内心思っております(爆笑)。
 
 今日ここで飲んでいる吟醸古酒は、もし東京の飲み屋さんで飲んだら、今飲んでいる小さな杯で、一杯三千円、安いのでも千円はするでしょう。もっとも東京の飲み屋さんに、今飲んでいる酒はありませんが。そしてもしオークションにかけられるようなことにでもなれば、720mlひとびん、6桁から始まってすぐに値が上がると思います。

 それはともかく、古酒は飲んだ年数分だけ、長生きできると申します。ここにある酒を一通り飲んだら20年、ふた巡り飲んだら40年長生きできる勘定になります。最上川の社長の岸さん、何才になりますか?

 岸さん「百才を越えますね」(笑い)


 今、出された吟醸酒は、ちょっと冷え過ぎています。今の部屋の温度は18度ぐらいです。吟醸酒の温度が部屋の温度になじんで、だんだん上がっていくときの香りや味の変化を、ゆっくりと味わいながら、皆さん、十分に楽しんでください。

 メロンの香のするもの、ナシの香、バナナの香、リンゴの香、その中でもデリシャス種、インド種の香、杉の木の香もあります。そのほか実に様々な香が含まれております。また若い娘のような酒、ちょっと年のいった女盛り・・けっして出戻りとは、言いませんが(爆笑)・・のような酒もあります。

 ちょっとずつ飲んで楽しんでください。(拍手)

くらべ飲みについて

 吟醸酒の楽しみのひとつに、くらべ飲みがございます。皆さんご存じのように吟醸酒は、それぞれ個性の強い酒でございます。今日の集いのようにさまざまな吟醸酒を比べて飲むと、一種類だけの吟醸酒を飲むより、もっと吟醸酒の美味しさ、楽しさが分かります。

 また、今日は、つたや本店さんの素晴らしい料理がございますが、どの料理にはどの吟醸酒が一番合うかを試しながら、味わってください。(拍手)

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…… 編集後記 ……


 第五回「名酒を楽しむ集い」は、山形新聞でも取り上げられ、大盛況の中、閉宴することができました。

 これもひとえに、ご出席いただいた皆様、各蔵元の皆様、お手伝いいただいた方々、つたや本店様のご協力、そして何よりも、お忙しい中はるばる東京からご参加下さった篠田次郎先生のお蔭と心から感謝いたしております。

 紙上を借りて、改めてお礼申しあげます。本当に有り難うございました。

 なお、次回の「名酒を楽しむ集い」は、時期は未定ですが、東北各地の素晴らしい吟醸酒を集めてやりたいと思っております。

 一人でも多くの方々に、吟醸酒の素晴らしさをお伝えできることは、まさに酒屋冥利につきます。今後とも宜しくお願いいたします。


それ程にうまきかと人の問ひたらば
        何と答へむこの酒の味

若山牧水

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