第56号(92.05.10)

清酒のできるまで

 冷たい風が吹きつけ、時には霰が屋根を叩く日が、一週間以上もつづいています。もう五月だというのに・・・。
 今回の富田通信は「清酒のできるまで」を書いてみました。かなり大まかではありますが、清酒製造工程の図も付けましたので合わせてごらんください。

清酒のできるまで

 製造の工程は右の図に示したように、まず玄米を精米して白米を蒸し、一部を麹にします。酵母を培養した酒母に、麹、蒸米と仕込水を三回に分けて加え、順次増量しながらもろみをつくります。約20日間、ゆっくりと醗酵させた後でしぼり、新酒をとります。滓(おり)を除いて火入れ殺菌をし、貯蔵・熟成させてできあがりです。

 さて、これらの工程を追って、簡単に説明してみましょう。

酒造米

 酒米として好まれるのは、山田錦とか美山錦といった大粒の心白米(しんぱくまい、米の中心部がもち米のように白い米)です。これらの米は酒造好適米と呼ばれ、普通米より60kgあたり1,000〜7,000円も高い米です。

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仕込水

 仕込水については、鉄分の少ないことがいちばん大切です。

精米

 精米の目的は、玄米の外層に多い、脂肪、蛋白質、灰分などを除くことにあります。普通酒で75〜70パーセントの精米歩合。吟醸酒の場合は60〜35パーセントにもなります。

蒸し・蒸米

 白米を洗って糠をとり、水に浸して水を吸わせた後、大釜の上にのせたこしきに入れて蒸します。蒸す目的は、米のでん粉を消化・分解しやすい糊化でん粉にすることにあります。

麹づくり

 麹は蒸米の上に黄麹菌を生やしてつくります。32℃くらいにした蒸米に種麹をまき、暖かい麹室に入れ、約二日間をかけます。

酒母の育成

 酒母はモトともいうように、酒になるもとである酵母を育成する場であります。麹と蒸米と水とを混ぜ、酵母をうえつけてつくります。

もろみ

 酒母に麹、蒸米、水を加えてもろみを仕込みます。一度に大量の蒸米や水を加えると、もろみの酸や酵母の活性が低くなり、不良乳酸菌などの汚染を受けるので、三回に分けて仕込みます。これを段仕込みといい、それぞれ初添え、仲添え、留添えと呼び、その分量は、酒母を一とすると二、四、八倍と、倍々に増やしていきます。

しぼり

 熟成したもろみは圧搾して、新酒と酒粕とに分けます。

新酒、火入れ、貯蔵

 新酒には麹の酵素がまだ生きていて酒質を変化させたり、火落菌(ひおちきん)が入って混濁したりするので、それらを防ぐためにしぼってから約二ヵ月くらいして味なれしたところで65℃前後に加熱殺菌(火入れ)して貯蔵タンクに移します。

びん詰め、出荷

 出荷に際しては、数本のタンクの酒を調合して酒質を整え、所定のアルコール分になるよう加水し、火入れ殺菌しながら熱酒をびん詰めします。

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 商 品 案 内


本醸造・出羽桜

 従来あった出羽桜・二級本醸造酒( 1.8L¥1,750)が級別廃止にともない製造中止となりました。長い間のご愛顧ありがとうございました。

 それに代わって、新しく本醸造・出羽桜が発売されました。この本醸造酒は、58パーセントという非常に高い精米歩合を持ちながら、価格は1,850円と低くおさえられています。

 高精米歩合による軽さと爽やかさは、絶対のお買い得! お薦め品です。

精米歩合:58パーセント 1.8L ¥1,850



初孫・純米吟醸・花のささやき

 山形県酒造組合連合会が山形県工業技術センターの指導のもとで開発した新酵母・YK-2911を使って醸した、新しいタイプの純米吟醸酒です。バナナを思わせる吟醸香と爽やかでソフトな甘酸っぱさが女性に大好評です。

 冷やしてお召し上がりください。

 原料米:美山錦     精米歩合:50%
 アルコール度:12.3  日本酒度:−10
 酸度:1.7   300ml ¥600

…… 編集後記 ……

○例年ですと、今頃は田圃の代掻きの真っ最中のはずですが、今年は4月29日からの低温と悪天候のせいで、代掻きの前の荒起こしも出来ない状態です。おまけに、今日の大雨、洪水警報ときては・・・。農作業の遅れが心配です。
○富田通信が4月23日付けの山形新聞で紹介されました。おかげですっかりプレッシャーがかかり、今回の富田通信は大難航。いいネタはないかと、いくら頭を絞っても、掻きむしっても、出るのは抜け毛と脂汗ばかり。気晴らしに釣りにでもと思っても、この寒さと雨ではままならず。新聞で紹介されたばかりで、富田通信、ヤメーッでは、恰好もつかず……万事休す、と思いながら

今まで書いた富田通信をみていたら、なんと、肝心要の「清酒のできるまで」を書いていなかったのでした。ホッ! ヤッタネ! そんな訳で、今回の富田通信、内容がすっかり堅くなってしまいましたが、お許しのほどを。

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