掛留・こしきだおし ところで、去る3月27日、新庄地区の酒蔵である最上川さんと花羽陽さんの合同のこしきだおしのご祝儀に招待されて、たいそうな料理と美酒をご馳走になってきました(ハハハ、酒屋の役得です)。 そこで今回の富田通信は、皆様方にはあまり馴染みのない言葉かもしれませんが、「こしきだおし」について坂倉又吉氏の『酒おもしろ語典』から抜き出して書いてみましょう。 ちょっと専門的な話になりますけれども、酒の仕込みに当たっての主原料は、麹(こうじ)と蒸米と水なのですが、まず最初に小さい桶(タンク)にそれだけのものを混ぜて酒母を仕込み、それが20日ばかりで出来上がるとその酒母をもとにして、今度は大桶(今では大タンク)に移して、本仕込み(もろみの仕込み)をします。 |
そしてその第1日が初添(はつぞえ、単に添ともいう)、第2日は踊りといってその日はそのままにして踊らせ(醗酵させ)、第3日に仲添(なかぞえ、単に仲ともいう)、そして第4日目が留添(単に留ともいう)といいます。つまり、「添、仲、留」の3回に分けて、さらに麹・蒸米・水を掛けて、その量もその都度、一、二、三倍と増していき、最後の「留」のときでの量が、それぞれの蔵の規模によって違いますけれども、大体3キロから6キロリッター位になるのです。そんな作業を毎日毎日続けて、一日に1本ずつ「留」をするのが日仕舞、隔日に1本ずつ「留」をするのが半仕舞と呼んでおります 。 さて、そんな仕事を、冬のうちの、しかも一番寒い時刻の早朝2時頃にもう一番方が起きて毎日続けてやっていたのですから、その厳しい作業が今日をもって終わる日、すなわち麹と蒸米と水をもろみに掛けることが留まる日というわけで、「掛留」というのです。 また、このことを「こしきだおし」または「こしきころばし」「こしきおとし」などというのは、この米を蒸すところの、いうなればセイロのおばけのようなのを甑(こしき)といいますが、その「こしき」が用ずみになって、大釜の上から倒す(ころばす、おとす)というところから来ているのです。またそのことを、「どころばし」という地方もありますが、このドというのは、フカシドすなわち甑のことです。この日は、杜氏以下の蔵人を正座に据え、主人が下座で慰労の宴を張るのが通例のようです。 | |
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