第54号(92.03.10)

清酒の級別廃止

 3月。“北国の春の幕開けは光によってなされる”といった意味のことを誰かが言いましたが、事実、気温よりも光のきらめきに春を感じる今日この頃です。

 4月になれば、いよいよ待ちに待った…渓流の解禁日。小川のせせらぎに身体も心もどっぷりと浸して、あの光輝くヤマメを釣りに・・・あっ、失礼。どうも仕事より遊びが勝ってしまいますねぇ。では改めて。
 4月になれば、いよいよ待ちに待った清酒の級別が廃止になります。今回の富田通信は、この清酒の級別廃止についてすこし書いてみましょう。

級別の誕生と廃止の歴史

なぜ、清酒の級別廃止が待ちに待ったことなのか? この疑問にお答えするには級別が誕生したいきさつから始めなければなりません。

 昭和6年、日本は満洲事変を契機に泥沼の戦争に突入していきます。当時酒税の国家予算に占める割合は大変大きいものでした。増大する軍事費をまかなうために政府は酒税をどんどん上げていきました。

 そしてついに、昭和18年4月1日から、清酒に一〜四級までの級別がつくられました。
 級別は専門用語でいうと「級別差等課税」で、高

級な酒と低級な酒とを区別して、高級酒からは低級酒より高率な酒税を取り立てるということです。つまり、高価な酒も安価な酒も同じ酒税しか取れないのはおかしいというのが酒税における級別の発想なのです。

 酒税を増やすことが級別の目的でしたから、昭和19年には清酒の級別から安い四級が消されました。そしてその翌年、敗戦の20年には更にその次に安い三級が消されてしまいました。酒税の上がりの少ない低級は所詮消される運命にあったのです。

 こうして昭和23年まで、清酒は一、二級の2階級時代が続きます。この頃はまったくの清酒不足時代で、どんな清酒も非常に貴重な存在で、プレミアムつきの時代でした。

 そして、昭和24年はアメリカからの経済特使シャープ博士のいわゆる、シャープ勧告による大増税の年でした。この年、一級清酒より更に高率の酒税の特級清酒がつくりだされました。

 この特、一、二級の3階級時代は、特級酒よりも旨い二級酒(吟醸酒、純米酒、本醸造酒など)の台頭と皆様ご存じの外国からの圧力で、平成元年4月1日に特級が廃止されるまで続きます。

そしてやっと、平成4年4月1日、一、二級の区別が廃止されて49年ぶりに日本の酒税法から級別の文字が消え、酒税の税率が一本化されます。

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今後の展望

 さて、前述したように今年の4月1日から清酒の級別は無くなりますが、それに替わって? 清酒メーカーの最大手月桂冠では「特撰」「上撰」「佳撰」というランクを付けるそうです。

 また山形県の場合は蔵元40社で作った『山形特撰会』というのが「特撰」「上撰」「精撰」というランクを作るそうです。他の蔵元も呼び名は違ってもなんらかのランクを付けて酒を出すだろうと思われます。

 これらの酒は、それぞれの蔵元なり団体が、独自の規準でランクを付けるのでしょうが私にはいまひとつピンときません。「級別廃止で選択規準がなくなり、消費者や酒販店が戸惑うことが予想される」というのが月桂冠のランク付けの言い分のようです。

 しかし、酒の選択規準はあくまで『味』であるはずです。それもメーカーが決めた押し付けのランクではなく、私たちが自分の舌で決めた『味』であるはずです。

 それに何よりも、吟醸酒、純米酒、本醸造酒などの造りによる選択規準があるではありませんか。せっかく特、一、二級という級別が廃止になるのに、級別もどきの幽霊を作り出すことはないと思うのですが……。

 今後、私たちはますます自分の舌を鍛練し、幽霊を退治し、世界に誇る日本酒文化の花を咲かせようではありませんか。乾杯!


編 集 後 記
 4年続きの暖冬とはいっても、現在積雪は60センチ余り。それでも雪の上から田んぼの畦の形がわかるようになりました。春は確実に近づいているようです。
 この調子でいけば、川辺の雪が消えるのも、そう長くはかからないことでしょう。ああ、ヤマメがこわい!!



商 品 案 内

アサヒワイルドビート

 力強い、引きしまった味感を持つ、まったく新しい飲みごたえ。

 自分の時間や空間を大切にする、男の“こだわり”と“わがまま”を表現した、ひと味ちがうビールです。

価   格:大ビン  /320円
      500ml缶/285円
      350ml缶/220円

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サッポロシングルモルト
 世界の逸品“アレクシス麦芽”だけを使った、世界初のシングルモルトビール。スッキリと爽快で飲みあきしない味わいと、シャキッとしたのどごしの ビールです。
価   格:大ビン  /320円
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キリンゴールデンビター
 ビールならではの“キリッとしたうまいにがさ”と“切れのよい後口”を実現。ビールの醍醐味を存分に楽しんでいただけるビールです。
価   格:大ビン  /320円
      500ml缶/285円
      350ml缶/220円

『吟醸酒誕生』出版記念クイズ

 先月号で紹介した篠田次郎氏の力作『吟醸酒誕生』、もう読まれましたか?吟醸酒という日本酒の頂点に挑む男たちの姿、感動的でしたね。それに、現在の吟醸酒、鑑評会に対する意見も、なかなかに刺激的でした。

 ところでこの前、ホテルで篠田さんにお会いして(といっても、二人は変な関係ではありません。念のため)いろいろ楽しいお話しを伺ってまいりました。そのお話しの中からクイズを出すことにします。

 篠田さんによると、この『吟醸酒誕生』のなかには、手落ちがひとつあるというのです。それはどこでしょうか?

 正解の方、一名様に、栄光冨士さんの幻の名酒「古酒屋のひとりよがり」を一本差し上げます。ハガキでご応募ください。

応募先 :富田酒店
応募締切:平成4年3月末日
 正解者多数の場合は、抽選で選ばさせてもらいます。

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E-mail:tomita@vega.ne.jp ->メール