第46号(91.07.10)


魚・肴・酒菜・・・

 ただいま、梅雨真っ最中。新庄市の花、アジサイも雨をうけて色あざやかに咲き誇っています。
 今年は、梅雨の当たり年? といっては何ですが、実によく降ります。渓川の流れは適度な水量を保ちヤマメやイワナ釣りには、もってこいです。釣ったヤマメの塩焼きでの一杯は何ともいえません。 そんなわけで今回の富田通信は、酒の肴についてのあれこれを一席。

魚はさかなの代表

 万葉の頃、酒の「さかな」は「酒菜」と書かれていました。この“菜”というのは酒の“そえもの”のことです。ですから、酒菜には野菜類をはじめ、魚、貝、鳥、獣は勿論のこと、酒席に興をそえる唄や踊りなど、あらゆるものが含まれていました。

 これが中世に入ると、魚が最も日本酒に合うため、やがて酒に用いる“菜”は、煮魚、焼魚、酢じめの魚などの“魚料理”が主となりました。古い文献に見られる「酒魚(さかな)」という語もこのことを示しています。

 室町時代の書物などでは、魚や鳥を「美物」、野菜を「粗物」と呼んで、差別していました。身近で安い野菜と比べて、魚は、旨いうえ、滋養があると信じられていたからでしょう。
 しかし、江戸時代になって漁業も盛んになり、魚も安くなって、庶民の間でも魚は気軽に食べられるようになりました。


 魚(うお)が“さかな”と呼ばれるようになったのも、魚が豊富な日本では、それが肴の代表と見なされたためでしょう。


イワナの骨酒(こつざけ)

 一種独特の香味で酒客をとりこにする酒に、「骨酒」があります。もともとは、焼魚などを平らげたあと、頭や骨などをあぶり、これに熱燗を注いだものですが、川魚などの小型魚をまるごと焼いても風味があります。

 このような酒の代表として、イワナの骨酒があります。作り方はまことに簡単です。以下に紹介します。

(1)まず、川に行ってイワナを釣ってくる。新庄でしたらちょっと山に入ればどこでも釣れます。ただし、休場の新田川には、ヤマメばかりで何故かイワナがいません。ねんのため。
 また、釣りをしない人は、釣人から1、2匹分けてもらう。きっとただでくれるはずですので・・・、多分。
(2)イワナのワタとエラを取って水洗いし、水気をよく切って、そのまま素焼きする。
(3)これをドンブリに入れ、上から熱燗を注ぐ。この場合の酒は、辛口の酒が良いようです。
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 ただこれだけのものですが、この酒、コクがあって香りがよくて、古来から絶品とされています。

 涼しい渓谷で釣りたてのイワナを焼いて日本酒に入れて飲む・・・。夏の釣人の最高のゼイタクです。ムフフ。


ヤマメの塩焼き

 いろいろ異論もございましょうが、小生は渓流魚の中でヤマメが一番、釣って面白く、また食べて美味しい魚と思っております。

 このヤマメ、漢字では山女魚と書きます。凛として、清洌な美しさはまさに渓流魚の女王というに相応しいものです。また、東北ではヤマメのことをヤマベと言いますが、これは山の周辺に住む魚、すなわち山辺からきたものでしょうか。

 さて、前置きはこれくらいにしてヤマメの塩焼きの話に入りましょう。ヤマメ料理はいろいろありますが、一番ポピュラーで、また美味しいのがこの塩焼きです。以下に焼き方を書きます。

(1)まず、ヤマメを釣ってくる。新庄では、そんなに山に入らなくても、川の中流域、たとえば田圃の中の川にもヤマメはいますので試してみてください。
(2)ヤマメのエラとワタを取って水洗いする。
(3)ヤマメの体の表面のヌメリを塩でこするか、使い古しの歯ブラシでこすって取る。これで、魚の生臭さがとれますので、ぜひやってください。
(4)ヤマメに串を打ち、塩をふりかけて焼く。


 以上で終わりです。ヤマメの塩焼きにキーンと冷やした日本酒。もちろん、本醸造・純米酒あるいは吟醸酒であれば言うことはありません。では、乾杯。


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 …… 商 品 案 内  ……

初孫 本醸造酒「渚の風物詩セット」

 冷やすほど旨さが冴えるリンゴ酸を多く含む本醸造と、豊かな含み香とふくらみのある味わいの吟醸酒が織りなす“旨さのハーモニー”

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出羽桜 超辛口吟醸酒「春雷(しゅんらい)」

 出羽桜酒造の久々の新製品、超辛口吟醸酒「春雷」が発売されます。

 ただ、「春雷」は同社の超人気商品「雪漫々」と同様、生産本数がごく少ないため、品切れの際は、ご容赦願います。

  日本酒度:+15  アルコール度:15.7%
  酸  度:1.2   原   料  米:美山錦
  容  量:720ml
  価  格:3,000円(予定)
  入荷予定:7月下旬

蔵元ニュース

亀の井酒造(株)

 吟醸酒「くどき上手」ですっかりお馴染みの亀の井酒造。石数900石と小さな蔵ながら、去年なんと53坪、貯蔵総数600石の冷蔵の蔵を建ててしまいました。その心意気の高さと酒に対する愛情には、まったく頭が下がります。蔵は名付けて「平成蔵」。

 今後ますますの美酒が期待出来そうです。


出羽桜酒造(株)

 今年6月、出羽桜酒造は県内では最も大きい冷蔵庫「冷温酒眠蔵」を建設しました。貯蔵石数は2,000石。今までの分と合わせると冷蔵貯蔵能力は、なんと4,000石となり、出羽桜酒造の総石数の約半分の量となります。

 吟醸酒にもワインと同様、古酒の時代の到来を予感させます。




……… 編集後記 ………

 下手の横好きで、渓流釣り解禁以降、頭の大半をヤマメ釣りが占め、ついに富田通信にまで、ヤマメが顔を出してしまいました。ああ、まったく何とかならないものでしょうか・・・。

 ところで、今度一緒に釣りにいきません?

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E-mail:tomita@vega.ne.jp ->メール