第43号(91.04.10)

花見酒


 田圃の雪も消えて、畦や土手のあちこちにフキノトウが顔を出しています。
 すずめのさえずりも大きくなり、裏庭の桜の花芽も幾分ふくらんできました。
 春! もうすぐですね。
 春といえば、花見酒。そこで今回の富田通信は、花見酒についてのあれこれを書いてみたいと思います。

花見酒(酒おもしろ語典より)

 日本の歴史に残る最も有名な花見の宴は、桃山時代の豊太閤醍醐の花見といえましょう。これは奈良平安朝時代の花見と違い、一種の豪華な園遊会でありました。そしてその形式が変化しつつ、現在の花見になったようです。即ち、今日の酒は、大衆化された戸外の酒と言えますが、これは秀吉の遺した名残りであります。

 徳川時代の花見の宴となりますと、もう太閤式の豪華なものはありません。家族同士、友人同士といったような、小グループの花見が盛んに行なわれ、小金井・御殿山・上野・向島はその大衆化された公開花見会所でありました。

 そしてその頃の花見は、落語等で見られる、けちな大屋のおごりの長屋一同の屋外運動会であったり、また綺羅をかざる箱入娘の展覧会、今日のニュー・ファッション・ショーともいうべき衣裳自慢の会、あるいは隠し芸大会、和歌、俳諧の会であったり等々、いろいろの目的が花見酒に含まれていました。

 そしてさらに吉原では、夜桜などを植え、天下の嫖客をここに吸引しようとつとめたということなどは、花見の方向転換であります。

 また朝桜や雨中の桜を、独りしずかに眺めるために、ひょうたんを腰にして出掛ける風流人もありました。行く行くひょうたんの酒を飲み、また興の趣くままに立ち止まって、矢立てを出し、一句ものするなどというのは、正に俗世間から超越した花見と申せましょう。

  一僕ととぼとぼ歩く花見かな

などというのは、真の意味の花見かも知れません。 しかし、大抵の花見は、昔も今も

  酒なくて何の己れが花見かな

「花より団子」というところで、花を肴に酒を飲むわけですが、それがついには花にこじつけて・・・となり、さらに酒の度が超す乱暴狼藉とまでになりますと

「何事ぞ花見る人の長刀」と言ったようなことにもなりかねません。

 さて現代の花見はいかがなものでありましょうか? 花見のたびにお巡りさんのご厄介になる方々がふえてきますと“トラ退治法”こと「酒に酔って公衆に迷惑をかける行為の防止等に関する法律」の適用がきびしくなって、世の多くの愛酒家にもご迷惑をかけることにもなります。
 もっと健康的で家族的な一家団欒のお花見など、お薦めしたいものです。

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花見酒には、吟醸・純米・本醸造酒

春さればまづ咲く宿の梅の花独り見つつや春日暮さむ  (山上憶良)

と、ひとり静かに呑む酒も、家族や友人達とワイワイやる酒も、吟醸・純米・本醸造酒であれば、楽しさが倍増すること請け合いです。
 爽やかな呑み口の本醸造酒、米からくる酒本来の味と香りの純米酒、酒の芸術品と呼ぶにふさわしい吟醸酒。 ぜひいちどお試しください。うまいですよ〜!
 なお、下の詩は中国の詩人、陶淵明の『停雲』という詩の一節です。ひとり呑む酒の肴にでもなれば幸いです。それでは、乾杯。



 




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商 品 案 内

天盃冨士…吟醸酒『香雲』
 天盃冨士の藤屋酒造本店は、山形県松山町にある石数700石の小さな蔵元です。3月11日におじゃましたときには、酒の仕込みはもうほとんど、終わっていましたが、社長の斎藤大輔さんの酒に対する研究心と謙虚さには 頭が下がりました。『香雲』という酒名は、自宅の洋間に掛けてある、愛酒不愧天(愛酒、天にはじず)と書かれた額の書家の名前を頂戴したものだそうです。香り、味ともに一級品です。

原料米:山田錦  精米歩合:40%

容 量:720ml  価格:2,500円


出羽桜…純米酒『一耕本生古酒』
 出羽桜酒造では、今回だけの限定で『一耕本生古酒』を発売いたします。
 さらりとした旨さに、熟成による落ち着きとまろやかさを加えた『一耕本生 古酒』。今から呑むのが待ち遠しい酒です。

入荷予定日:4月中旬 入荷数量:30本

容 量:1.8L   価格:2,600円

編 集 後 記

 ムフフフ。4月1日。ついに来ました、半年間待ちに待った渓流釣り解禁日・・・。で、4月7日、前日酒の呑み過ぎで宿酔ぎみではありましたが、ヤマメ釣りに行ってきました。

 前日の酒がたたって、出発は朝の10時とこの時期にしては、出遅れ。案の定、雪解け水で本流筋は増水が激しくダメ。あちこち回って、結局たんぼの中を流れる小川に糸を下ろしたのが昼過ぎでした。

 川の流れの目を読んでえさを入れる……目印に変化! 竿をおこす、ヤッタ! 竿を通して伝わる魚の躍動感。半年ぶりの手応え。

 今年の初めての獲物は21センチのヤマメでした。この日の釣果は、21〜24センチのヤマメが5匹だけ。でもまぁ、小生の腕ではこんなものでしょうか。

 さぁ、今年も釣るぞ〜。

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