第41号(91.02.10)

本醸造酒って何だべ?

 今年も雪が少なくて、屋根の雪おろしも一回だけ。やったね! 一回ぐらいならば「趣味の雪おろし」。
 なぁんて思っていたら、2月に入って連日の雪・雪・雪。雨で景色が霞んで見えたらロマンチックな気分にもなるけれど、あきれるばかりの雪降りでは、10メートル先は景色が消えてただの真っ白。これに風でも加われば、一寸先は闇・・・じゃなく、ぜ〜んぶ白。
 この分では、今年は「趣味の雪おろし」で終わるかどうか・・・ハァ。

 前置きが長くなりましたが、気を取り直して本題に入ることにしましょう。


本醸造酒とは……

 いきなり堅い話になりますが、しばらく我慢してお読み下さい。平成2年4月1日から施行された「清酒 の製法品質表示基準」によると、本醸造酒とは、「3等米以上の品質でかつ70%以下に精米した白米と、これと同等の白米を使用した米麹および水と、醸造用アルコールを添加して造った酒。ただし、そのアルコール(アルコール分95%)の限界重量は、使用白米の10%以下とする。できた酒は、香味、色沢が良好なものとする。」となっております。

 どうです? わかりましたぁ? 酒屋の私が読んでも分かったような分からないような、酒が旨いのか旨くないのか???。

 そこで、あえて私の独断と偏見での本醸造酒の定義。「本醸造酒とは、まず純米酒を造り、酒をしぼる直前に、醸造用アルコールをちょっとだけ入れて造った酒。香味は軽快そのもの。味と財布と相談すれば、超お買い得品。ついつい飲み過ぎる点からいえば、不経済酒? 私の晩酌用の酒。冷や良し、燗また良し。また息が酒臭くならないのでナイトキャップとしても、どうぞ。」

本醸造酒とアル添酒(アルコール添加酒

 つぎに本醸造酒とアルコール添加酒(以下、アル添酒といいます)とのかかわりについて、書いてみます。
 本醸造酒が本醸造酒と規定されたのは、意外に新しく、昭和50年1月1日の「清酒の内容表示」によってです。

 もっとも、酒にアルコールを入れる技術は、かなり昔からあったようです。「柱焼酎」といって、酒のもろみの醗酵がうまくゆかず、そのままでは、貯蔵して夏を越せそうにもないときなど、焼酎をまぜて酒の腐るのを防いだのです。

 やがて、第二次世界大戦になり、戦中、戦後の物がなかった時代に不幸にもというか、しかたなくというか、この技術が転用されたのです。

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 つまり、酒にアルコールをジャブジャブ入れて酒をのばし、さらに、アルコールをあまりに入れ過ぎると酒の味が薄っぺらになるので糖類をいれて味を濃くして・・・。俗にいうアル添酒、三倍醸造酒の登場です。

 戦後の酒の味を壊したのは、この多量のアルコールの添加にある、ということは、間違いのないことでしょう。しかし、これが誇張されすぎて、アルコールを添加した酒イコールにせものの酒、といった風潮はちょっと行き過ぎのような感じがします。

 こんなことを書くと、「なんだ、お前はアル添酒のかたをもつのか。」などといわれそうですが、あえて誤解を恐れずにいうならば、必要最小限のアルコールの添加は、酒の風味を軽やかにするというメリットがあるのです。

 本醸造酒とアル添酒。両者ともアルコールを添加した酒には違いありませんが、その酒造りの哲学には雲泥の差があります。前者は軽快な旨い酒を造るため、後者は酒の量を増やすため。両者の味の差は、いうまでもないでしょう。

酒のTPO

 本醸造酒、純米酒、吟醸酒、皆ほんとうに旨い酒ですよね。これらの酒は、同じ蔵元の酒であってもそれぞれ個性がありますから、時、場所、体調などによって呑む酒を違えてみるのもいいと思います。

 たとえば、晩酌には本醸造酒、月や雪を友としてしみじみ呑む時には純米酒、ひさしぶりの親友との語らいには吟醸酒、といった具合に。
 また同じ本醸造酒、純米酒、吟醸酒でも蔵元が違えば、味はそれこそ千差万別。料理に合わせて酒を選ぶのも楽しいと思います。

 蛇足ながら、本醸造酒、純米酒、吟醸酒の中には、えっ、これがと思わず首をかしげたくなるような酒もありますので、くれぐれもご用心のほどを。

 最後に、人生を豊かにするような、旨い酒との出会いを祈って・・・乾杯!



富田酒店お薦め本醸造酒

出羽桜酒造
本醸造酒 1. 8L 1, 750円
 吟醸蔵として、あまりに有名なため、吟醸酒のかげにかくれて目立たないが、香味ともに優れた逸品。
春の淡雪 1. 8L 2, 150円
 本醸造生酒。霞のような薄濁りの酒。女性に特に人気。
枯山水  1. 8L 3, 000円
三年古酒。言わずと知れた幻の名酒。熟成した味はまさに天の美祿。

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新庄酒造
とろり五年 720ml 2, 100円
 本醸造原酒。五年古酒。名前のごとく、とろりとした味わい。吟醸香あり。ロックでどうぞ。


冨士酒造
本醸造からくち 1. 8L 1, 800円
 あの「古酒屋のひとりよがり」で有名な栄光冨士のからくち本醸造酒。なめらかなのどごし。
なまいき    500ml 600円
本醸造生酒。安くて旨い。



樽平酒造
雪むかえ 720ml 1, 200円
 本醸造生酒。樽酒ではないが、どこかにその面影を感じさせるしっかりした味。

編 集 後 記

 知ってましたか? 山形県の北部に位置する新庄・最上地方の面積が、大阪府や香川県の面積に匹敵し、東京都、神奈川県、鳥取県などに肉薄することを。さらにその人口密度は北海道をも下回ることを。

 山形県は日本のチベットと言われて久しいですが、新庄・最上地方は、さらに山形県のチベットと言われています。自然の崩壊が叫ばれる中、世間の慌ただしさから取り残されたこの雪深い、新庄・最上地方で暮らせることを感謝しております。

 ああ、春が待ち遠しい。あの光りきらめく川でヤマメを釣りたい・・・。

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