第36号(90.09.10)

酒よもやま話

 つい、ひと月程前までは射るように強かった太陽も、今は肩に限りなく優しく、暖かな光をそそいでいます。田圃も一面、黄金色に輝いて風に波打っています。秋ですねぇ・・・。夏の疲れが徐々に消えていきます。

 今回の富田通信は、体も心も休め!で、酒よもやま話。

猩々(しょうじょう)

    〔坂倉又吉著 酒おもしろ語典より〕

 お目出たいときに謡う謡曲 に「猩々」というのがあって、そのあらましは、・・・唐土に高鳳という孝行者があり、ある夜の夢のお告げの通りに市に出かけて酒を売ったら大金持となった。ところがこの 店に市毎に酒を飲みに来る客があったが、いくら飲んでも酔わないので不思議に思い、その名を尋ねると、猩々だと答えた。そこで猩々の住む川岸に行ってみると、酒を飲みつつ猩々舞を舞い、高鳳に永久に汲めども尽きせぬ酒壺をくれた。
そして最後に有名な地謡(じうたい)の、
よも尽きじ、万世(よろずよ)までの竹の葉の酒………(中略)……尽きぬ宿こそめでたけれ
で終わりますが、ここのところは宴会などで見る粋人の仕舞でご存じの通りであります。

 また「汲めども尽きず、飲めども変わらぬ」底無しの酒豪に「猩々」の尊称を奉っているのも、この謡曲から来たものです。

 そのように猩々は根からの酒好きですが、ついその酒につられて捕らえられるといいます。『心学道話』の中には、そこのところを面白い寓話にしています。

 それによると、人間共は、猩々は酒が好きでそれに猿真似で沓(くつ)をはくことが好きなのを利用して、酒壺と、わなの沓を用意します。すると

1、まず猩々どもは、くだんの酒壺からの匂いをかすかに嗅ぎつけて、海から上がろうか上がるまいかと評定をするが「これは人間共の恐ろしい計画じゃから」との反対の声も、もう一匹の、嗅ぐだけならよかろうという言葉につられてみんなが酒壺の側までよって来る。

2、そのうち嗅ぐばかりじゃ耐えられぬ。この前先輩は、ひしゃくを使ったから失敗したが、指の先へつけてなめる位ならよかろう、となる。それから、だんだん

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3、ひしゃくで飲んでも酔わぬ程度ならよかろう。

4、酔うても沓をはかねばよかろう。

5、沓をはいてもおどらねばよかろう。

6、おどるにしても手拍子だけならよかろう。

7、いや足拍子をとってもころばねばよかろう。

 といううちに、ついには足をとられて、捕らえられてしまうのですが、優柔不断な人間の中にもありそうな寓話であります。
 閑話休題。
よ〜し、今夜は絶対酒を呑まないぞ・・・エヘ!?


……… 編集後記 ………
 8月24、25、26日の新庄祭りの一ヵ月にわたる夜12時過ぎまでの山車制作と猛暑のため、今頃になって夏ばて。歳ですねぇ・・・。そんな訳で、最後のページは、ついにからっぽ、小生の頭もからっぽ。・・・ゴメン。

ボージョレ・ヌーボー情報

 日本の国家行事となる天皇の即位の礼が11月12日に行われるため、海外からの賓客の来日や離日ラッシュがヌーボー解禁日(11月の第三木曜日)の週にぶつかります。普段でも混雑が激しい成田空港に、より多くの航空機が離発着するのですから、ヌーボーを積んだチャーター便に支障がおきかねません。 そこで日仏のヌーボー関係者は、今年のみ日本に限り解禁日を一週間遅らせて、11月の第四木曜日(22日)にすることに合意したそうです。

 ヌーボーのファンにとっては、この遅れは何とも残念でしょうが、そのかわり今年のヌーボーは、いつもの年に比べ一週間遅れによる、まろやかさ、上品さ、落ち着きなどが加わり、つい先頃ご結婚された秋篠宮妃殿下紀子さまのように清純で初々しい、にこやかなヌーボーになっていると思われます。

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