第32号(90.05.10)

ウイスキー

 慌ただしかったゴールデン・ウィークも過ぎ去り、ふと近くの山々に目をやると、いつの間に着替えたのか、すっかり萌え黄色。中でもカラ松のドキリとするような真緑色に思わず我を忘れたりして・・・。

 忘れたといえば、今までの富田通信の中で、なぜかウイスキーを取り上げてなかったんですよね。そこで今回は、おくればせながらウイスキーについて書いてみたいと思います。

ウイスキーの起源と語源

 ウイスキーは、穀物を醗酵、蒸留したうえで、樽熟成させた酒です。穀物を醗酵、蒸留するという点では、ジンやウオッカのような無色透明な酒の兄弟分ということが出来ます。ですが、そのあと樽熟成を必須条件としている点が、ジンやウオッカと決定的にちがうところで、酒の色が琥珀色をしているのも、樽熟成によるものです。

 ウイスキーの蒸留がいつごろから始まったのか は、あまり明らかではありません。

 ただ、中世に練金術の恩恵を受けて、アイルランドで生まれたであろうということが、ほぼ定説になっています。
 練金術は、四世紀ごろ、エジプトあたりでシステムをととのえ、アフリカ北部を西に広がり、中世初期にはスペインまで伝わりました。その伝播過程のどこかで、練金術用のルツボに何らかの醗酵液を入れたところ、アルコール度数の強烈な液体が、偶然に得られました。それが、人類が蒸留酒というものを経験したそもそもの始まりですが、練金術師はその酒を、ラテン語で
アクア・ヴィテ(生命の水)と呼んで、不老長寿の秘薬として扱いました。

 やがて、この「生命の水」の製法は、海を越えて、北方のアイルランドに伝わり、その地で飲まれていたビールを蒸留して、強烈な酒を生むことになります。土地の人は、生まれた酒「生命の水」を、自分たちの言語ゲール語に直訳して
Uisge-beatha(ウイスゲ・バーア)と呼びました。これがウイスキーそのものの起源であり、かつウイスキーという名称の由来でもあると考えられています。
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ウイスキーの産地別特色

 ウイスキーは、いまや地球上のいたるところで作られていますが、優れたウイスキーを生んでいるのは、(1)スコットランド、(2)アイルランド、(3)アメリカ、(4)カナダ、(5)日本、以上五つの地方です。以下に簡単にその特色を書いてみます。

(1)スコットランド(イギリスのブリテン島北部)ここで生産されるのが、スコッチ・ウイスキー。

 スコッチ・ウイスキーは、製法上から、(a)モルト・ウイスキー、(b)グレーン・ウイスキ ー、(c)ブレンデッド・ウイスキー、の三つの タイプに分かれます。

モルト・ウイスキーは、ピートの煙臭をしみ込ませた大麦麦芽(モルト)だけが原料。 醗酵後、単式蒸留機で2回蒸留し、オーク樽で最低3年熟成します。ピート香と樽香ののった、こしの強いウイスキーです。

グレーン・ウイスキーは、とうもろこし約8割に、ピート香をつけていない大麦麦芽約2割を混ぜ、連続式蒸留機で蒸留したもの。最低3年間樽貯蔵され、味はソフトでマイルド。グレーン・ウイスキー単独でびん詰めされることは、ほとんどありません。

ブレンデッド・ウイスキーは、モルト・ウイスキーと、グレーン・ウイスキーをブレンドしたものをいいます。数量的には、スコッチ全体の98%がブレンデッド・ウイスキーです。

(2)アイルランド(政治的に英領北アイルランド自治州とアイルランド共和国から成る) どちらの領土で作られるウイスキーも、アイリッシュ・ウイスキーと称しています。

アイリッシュ・ウイスキの原料は、大麦麦芽、大麦、ライ麦。麦芽には、ピートによる煙臭はつけません。これらを大型の単式蒸留機で3回蒸留し、最低3年、樽で熟成させます。これをボトル詰めしたものが、国内向けのアイリッシュ・ウイスキー。スコッチよりこしの強い、ヘビーなウイスキーです。

 海外向けのものは、グレーン・ウイスキーをブレンドした、穏やかな風味の、ライトタイプ・ウイスキーになっています。

(3)アメリカ  原料、製法によりさまざまなタイプのウイスキーを生んでいますが、代表的なのがバーボン・ウイスキーです。

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バーボン・ウイスキーは、未発芽のコーンが主体(51%以上)の原料を約12%の麦芽で糖化しますが、このとき仕込み水の一部に蒸留した残りの液の一部を用いる(サワー・マッシュといいます)こと、糖化液は濾過せずにそのまま醗酵させるのが特徴です。
 醗酵後、連続式蒸留機で蒸留し、内面を焼いたホワイト・オークの新樽で、最低2年間熟成させます。このため、樽から、色、香りともに強い物質が溶け出し、世界のウイスキーの中でも最も強い個性を持っており、特有の強い香味と濃色が特徴的です。

(4)カナダ  カナディアン・ウイスキー。

 カナダのウイスキーは、世界の五大ウイスキーのなかでは、最も軽快な風味を持っています。ライト&スムーズなウイスキーの典型です。

カナディアン・ウイスキーは、独特の製法を採用しています。まず、ライ麦が主体のフレーバリングという穏やかな香味の原酒と、とうもろこしが主体のベース・ウイスキーという極めてクリーンな原酒をつくります。そして、両者を、ともに3年以上樽熟成したのち、適宜ブレンドして、さまざまなウイスキーに仕上げるのです。 

(5)日本  日本のウイスキーは、スコッチタイプですが、ピートによる燻香は、スコッチ・ウイスキーに比べて控え目です。しかし、樽に由来するアクセントが強く華やかです。水割り等の飲み方をする日本人の嗜好を考慮するとともに、日本独特のウイスキーとなっています。



…… 編集後記 ……
○皆様には、いつも大変ご迷惑をおかけいたしておりましたが、やっと富田酒店にもファクシミリが入ることになりました。設置予定としては、5月の中旬ごろです。ファクシミリの番号は、当方只今、マル貧につき、電話共用の0233−22−7571です。どうぞ、ご利用下さい。
○只今の時刻は、5月10日午前零時40分。毎度のことながら発行日ぎりぎりまで書いてます。そして、毎度のことながら、次号は絶対余裕で書き上げるぞ!と思っています。アァー、川が呼んでる。今度の晴れた日には、近くの川に、イワナ、ヤマメを釣りに行こう。

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