第29号(90.02.10)

きき酒入門

 余寒30日とは言うものの、屋根の雪おろしも一段落着き、窓の外から聞こえてくる雨垂の音に、微かな、本当に微かな春を感じながら富田通信を書いています。

 さて、2月1日から始まった「山形県新酒まつり」(後述)では、県下の全蔵元が、同一規格の純米酒の新酒を出荷!
 この滅多にないチャンスにいろいろな蔵元の酒の味を楽しむのも一興かと思い、きき酒の方法を簡単に説明したいと思います。
 さあ、ご一緒に各蔵元が丹精を込めた酒を楽しみましょう。

きき酒の目的

 ひとくちに、「きき酒」といっても、その目的とするところにより全く意味が異なります。例えば、清酒鑑評会で鑑定官がやるきき酒と、私たちがやるきき酒とでは、方法は似てい
ても、目的と意味とが違います。

 前者は、酒の優劣を決める為にきき酒をおこないます。従って、そのきき酒はどうしても鑑定する酒の欠点を探しがちなものになります。

 しかし、私たちがきき酒をする目的は、酒を楽しむことにあるはずです。従って、そのきき酒は、酒の良い点、旨い点を探すこと、さらには、その酒の酔い心地までをもきくことにあると思うのです。

きき酒の順序

 酒のきき酒は、次に書くように色沢、香り、味の順におこないます。

(1)色とサエ
 まず、目でよく観察し、色が有るか無いか、その濃 さや色調、サエ(透明度)の程度や浮遊物の有無についてみます。

(2)香り
 次に香りを嗅ぎます。グラスを軽く回して、香りを 嗅ぎ特徴をみますが、酒を口に入れた時、鼻に抜ける香りも十分にみます。

(3)味
 酒を少量、口に含み、すするようにして酒を舌の上に広げ味をみます。
 味を感じる感覚は、舌の部分によって異なりますので、含んだ酒を舌全体にいきわたらせることが必要です。
 甘、酸、辛、苦、渋とそのバランスをみて、最後に口から鼻に抜ける香りを再び確かめます。

 口に含んだ酒を口中に留めておく時間は、2〜5秒位ですが、酒を飲み込んだあと、口に残った味(後味)をみます。苦みや渋み、くどい甘さや嫌な辛味の無い、後味のさっぱりした酒が良い酒です。

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山形県新酒まつり
 山形の全蔵元が、酒造りに適している県産の「美山錦」という米を使って、純米酒の新酒を2月1日より出荷しました。全体で3万本(蔵元の石数割り。一蔵元平均約500本)の限定出荷です。
 さらに、今回は、一本に一枚スピードくじが付いていて、当たるとその場でもう一本もらえます。当たる確率は、何と6分の1!(つまり、同じ蔵元の酒を6本買うと、1本当たります。)
 蔵元出血の大サービスです。本数限定につきお急ぎください。詳細は以下のとおりです。

全商品共通
 
○種  類:純米酒・新酒
 ○使用米 :山形県産「美山錦」
 ○精米歩合:60パーセント
 ○容  量:720ml
富田酒店取扱銘柄と価格
 
○最上川(新庄) 1,000円
 ○初孫(酒田)  1,000円
 ○出羽桜(天童) 1,000円
 ○樽平(川西町) 1,200円
 ○栄光冨士(鶴岡)1,000円
 ○麓井(八幡町) 1,000円
 ○亀の井(羽黒町)1,000円

※上記の酒は、いずれも限定品につき品切れの際はご容赦ください。
なお、この他に、欲しいお酒があれば、仰ってください。当店で出来うる限り、ご用意致します。

…… 編集後記 ……

甦る酒まんじゅう

 食文化の変遷の中で、酒まんじゅうの多くが姿を消していき、呑んべぇで、くいしんぼうの私は常々残念に思っていたところ、「吟醸酒をつかった、酒まんじゅうができる」という話を耳にしました。場所は、天童市一日町の出羽桜酒造向かい。

 早速とんでいったところ、店の造りとは思えない、前に広い庭を配した立派な旧家。それに、なんとまだ店の改装工事の真只中!・・・???

開店日は2月12日!・・・なんという間抜け。しばし茫然と店の前で立っていると、「取り込んでいますが、良かったら中にお入りになってください。」と、品の良い女性の声。この人が経営者の仲野和子さんでした。

 恐縮しながら、中に入ると土間があって、板の間があって。話を聞くと本家が残した明治時代の家屋で、その八畳と六畳の二間を客の「お休み所」に開放するとのこと。広い庭を眺めながら美女でも侍らせて、一杯・・・などと考えていると「まだ店は開店していませんが、召し上がってみてください。」と仲野さん。目の前に出されたお茶と古い漆塗りの器にもられた、酒まんじゅう。
「いただきます」。上品な香りと味わい、しっとりとした舌ざわりは、絶品!

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 それもそのはず仲野さんは縁あって仙台の老舗に師事して技術を学ぶ一方、全国に残る主な酒まんじゅうを試食し、吟醸酒と大吟醸酒の酒粕とを元に独自の酒種を作りあげた大変な努力家。

 生地は水を一滴も加えず醸すようにじっくりと練りあげる。あんこは北海道・十勝の小豆を炊き、水でさらし、手でていねいに練ったこしあん。蒸しあげると、風味と香りを長持ちさせるため一つ一つラップで包む、名付けて『醸まん』。この醸まん、日持ちも良いそうです。
  ゆっくりひとときを過ごしてもらえればと、店の名前は、
『腰掛庵』

 
「一服の茶、一個のまんじゅうが訪れてくれた人の心を和ませ、一期一会の喜びになってくれれば、うれしい」と仲野さん。

 メニューは当分の間、煎茶や抹茶と醸まんのセットだけだそうです。持ち帰りは一個150円(税込)。6個、10個、15個の各箱入りがあります。

 とにかく、一度試してみてください。旨いですよ。

『腰掛庵』天童市一日町2丁目4−43
電話:0236−54−8056

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E-mail:tomita@vega.ne.jp ->メール