第28号(90.01.10)

酒林のはなし

 新年あけまして、おめでとうございます。今年は、雪の無い正月を迎えられそうだと思っていたら、大晦日から降り始めた雪が日に30センチ以上も積もって、正月2日には積雪が88センチ・・・。オメデトウゴザイマス。

 何はともあれ気を取り直して、新年の富田通信は、当店のレジカウンターの上にも吊り下がっている酒林(さかばやし)のお話を坂倉又吉氏の「酒おもしろ語典」より抜粋して書いてみたいと思います。

酒ばやし

 ご年輩の方はご存じだと 思いますが、昔は地方の造り酒屋の軒下に杉の葉をたばねて玉状に切りそろえたのが下げられていることがありました。そのことを「酒ばやし」といいまして、これは一種の酒屋の看板で、しかも酒屋によっては年の暮あたりの新酒が出来上がったときに新しい酒林を出すというところも多く、その場ですと、「新酒が出来ました」という知らせにもなっているわけです。

 その酒林のもとを探ってみますと、まず語源ですが、これには二説あって、中国では酒屋の看板を

「酒屋望子(バウシ)」といいますが、そのバウシを訛ってバヤシとしたのであろうと、これは新井白石の説。また、もとは「酒箒」(サカバウキ)といっていたのを訛ったのであろうと、これは、『類聚名物考』に出ています。

 酒林は、上の酒箒のほかにも、またいろいろに書き、また呼ばれています。即ち、「酒葉」(サカバ)、「杉葉」(スギバ)、「杉の葉」(スギノハ)、「杉の丸」(スギノマル)、「杉林」(スギバヤシ)、「杉団」「杉の酒林」等々です。

 次に杉の「酒ばやし」の起源を調べるべく文献により遡ってみますと、『嬉遊笑覧』(文政・1830)、『本朝武鑑』(享保・1720頃)、『醒睡笑』(元和・1620頃)、『奇異雑談集』(天文・1540頃)などに、いろいろと出ていますし、一休和尚(1394〜1481)の歌の中にも

 
極楽をいづこにありと思ひしに
      杉葉立てたるよも作が門


と出ています。しかし、これには異説があって、徳川時代の酒ばやし流行のとき、後世の人が作ったものであろうともいわれています。
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 しかし、一茶(1763〜1827)の

  
杉の葉のつるしてみるや濁酒

  杉の葉のピンと戦ぐや新酒樽

は、真作であること間違いありません。

 引例が長くなりましたが、その酒林を用いるようになったことについての起源にも二説があって、一つは酒の異名に「掃愁箒」といいますが、その愁をはらうためのほうきということから、杉の葉で作った酒箒を下げるようになり、それが酒林となったといい、またの説には、酒神を祭る三輪神社の神杉は、古くから三輪のしるしの杉と、『万葉集』『古今集』等の古歌にも歌われているから、その三輪の神杉から出たものであろうともいいますが、いずれもが本当だろうと思います。



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…… 編集後記 ……

 長いあいだ音信不通だった古い友からの年賀状を受け取る。すぐに電話をかけると、電話のむこうで意外にも明るい友の声。「なんとか、かんとか、暮らしているよ。」と・・・。思わず、目頭が熱くなるのを感じる。

 ああ、今年も皆が、ほんとうに平和でありますように。


酒販店が選ぶ人気銘柄・・・

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