第27号(89.12.10)

シャンパン物語

 シャンパン、なんともいい響きですよね。シャンパンを開ける時にはちょっとしたドラマがありますよね。コルク栓をゆわえつけている針金をはずし、コルク栓を慎重にゆるめる。緊張の一瞬・・・ポン! グラスに注がれる黄金色の液体。無数の小さな泡が絶え間無く上っていく。グラスを口に近づける。そして・・・ああ、この先を書くのはやめておきましょう。富田通信をほっぽりだしてしまいそうですので。

 なにはともあれ今回の富田通信は、この魅力に満ちたシャンパンの歴史について書いてみましょう。

シャンパーニュ地方のワインの始まり

 シャンパンの生産地、フランスのシャンパーニュ地方では、ずっと昔から、すなわち古代ローマ時代のシーザーの時より葡萄が栽培され、ワインの醸造を行なっていました。そしてこの地方に産出した泡立たないワインは、赤でも白でも、非常に高く評価されていました。

 この地方の丘に栽培された葡萄の品種は、ピノ・ノワールと呼ばれる黒葡萄やシャルドネイという白葡萄で、これら優良葡萄から作られる良質ワインは、16世紀にブルゴーニュがフランスの領内に入るまでは、もっぱらパリの人々の間で愛好され、名声を馳せていました。もともと卓越性を誇っていたこの地方の泡立たないワインが発泡性のワインとして有名になり始めたのは、17世紀の後半からのことです。

盲目の僧侶、ドン・ペリニョン

 
この地方の発泡性ワイン、すなわち今日のシャンパンはドン・ペリニョン(1639〜1715)という僧侶の貢献に負うところが 大です。彼は、1668年にマルヌ谷にあるオーヴィレールのベネディクト派の僧院の酒庫係に任命されたのですが、それから彼が死ぬ1715年までの間、この地方の良質ワイン作りにいろいろ貢献しています。
 その第1は盲人であった彼が素晴らしい嗅覚をもっていて、葡萄栽培者達が作る各種ワインや各種年度物をブレンドし、もっともすぐれたワインを調製する方法を工夫したことです。

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 これは今日シャンパン作りに欠かせない最も重要な方法のひとつです。(シャンパンはブレンドによってどの原酒よりも良質な酒を作り出す。完全なブレンドをするために、どの畑のワインをどのような割合で混合するかは、各会社共、門外不出の秘密とするところで、これにより各社の製品にそれぞれ特徴が生じる。)

 第2は、彼が酒庫係に任命される3年前(1665)に、英国で新酒のワインをびん詰めにして発泡性にすることが発見されていたのを知り、これをオーヴィレールへ導入したことです。

 すなわち、ワインに塵が入らないようにするために用いられていた油をひたした大麻の詰物のかわりに、コルク栓を使ってみたのです。油がしみた大麻の布は、塵を入れはしませんでしたが、びんの中でワインが醗酵してガス圧を生じる可能性をはばんでいたのですが、コルク栓を使用したために醗酵不十分なワインでは、その泡立ちが内部に閉じ込められてしまう結果になります。 これがシャンパン作りの基礎です。

シャンパンの量産化の成功

 このようにしてシャンパンは、ドン・ペリニョン在世の頃から徐々に世に知られるようになりましたが、まだまだ量産はされませんでした。

その分けは、シャンパンのびん内のガス圧を調整する方法が発見されていなかったからで、びんの破裂による平均破損量が40%にも及んでいました。そのため業者にしてみれば危険率の高いシャンパンを作るよりも泡立たない赤や白のワインを作っている方が良かったのです。

 シャンパンの量産が可能になり、製造業者が組織化されるようになったのは1836年に、シャロン・スール・マルヌのフランソワという化学者が、びん詰めする前にワインの残留糖分を測定して、びんの中で再醗酵するワインが作りだす炭酸ガスの量を予知する実験に成功(これをフランソワの比重計法という)し、これを発表してからのことです。

※シャンパンの地下貯蔵庫

 シャンパンは毎年1億5000万本くらい製造され、それを5年間熟成させると7億5000万本という莫大な数になります。シャンパン会社の酒庫は地下のトンネルですが、エペルネ市にあるモエ・エ・シャンドン社の地下トンネルの長さは、延長24キロメートルにも達するといわれています。

〔参考文献:ワインの知識とサービス/ワインの味わい〕

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幻の酒、出羽桜「枯山水」入荷!

 旨い酒には目が無い人には絶対に見逃せない、出羽桜「枯山水」が、今年も入荷いたしました。

 毎年、初冬に一度だけ限定出荷される「枯山水」の評価は年々高まる一方です。三年間の低温熟成による、枯れた、水のようにさわりのない味わいは、まさに絶品です。冷やよし、燗又よしの「枯山水」、旨いですよ!

○出羽桜「枯山水」案内

  内容:本醸造、三年熟成、大古酒

  容量:1.8L 価格:2,700円


富田酒店オリジナル
クリスマスプレゼントセール

☆クラッカープレゼント

 
期間中、ワイン、シャンパン、及びシャンメリー(アルコールの入っていない、お子様向け)をお買い上げの方に、一本に一個、パーティーに欠かせないクラッカーを差し上げます。

実施期間
 1989年12月10日〜12月25日まで

…… 編集後記 ……

 去る11月28日、仙台で開かれた平成元年度・東北清酒鑑評会に行ってきました。きき酒の大きな部屋に入ると、何とも芳しい酒の香り、それにおびただしい酒の数。東北全部から集まるのですから凄いものです。

 吟醸酒を出品した蔵、186。純米酒、156。これだけの酒を次から次と口に含んでは出し、含んでは出し。最後まで来た時には、口は痺れるやら、首から上は真っ赤やら。やはり酒は仕事抜きで、ゆっくり楽しむのが一番と悟った一日。

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