強くなれなかった少年
少年は、ぽつんと独り、何も無くなった部屋に立っていた、
何年、この家で暮らしてきたのだろう、
色々な想い出が・・・・.、
もちろん、楽しいことだってあったさ、
でも、少年には辛い想い出の方が沢山あったかも・・・、
住み慣れた、この家、
いま、少年は、この家を去る、永遠に、人手に渡るこの家を・・・。
少年の父が経営していたちっちゃな会社、倒産してしまった、
少年の父の自殺とともに、
少年はすでに、母を、社会人になっていた兄のもとに・・・、
少年は、ただ独り、最後までこの家に残った、
この家とお別れをするために、想い出を焼き付けるために、
流した涙を、強さに替えるために。
外に出た少年は、やがてゆっくりと歩き始める、
見送る人など誰もいない道を、わざとゆっくり歩く、
唇をかみしめ、惨めさを胸に刻み込むように、
いくら強がっても涙がこみ上げてくる。
この悔しさは、絶対に忘れない、強くなるために、
近所の家の窓からは、のぞき見るように無言の視線・・・、
その時、スカーレットオハラのように、心の中で叫んでいたはず、
こんな惨めな思い、どんなことしても二度とするもんか・・・。
時が経ち、少年は大人に、
でも、クールにも強くもなれない、むしろお人好しの大人に・・・、
生き抜くことが、どんなに大変なことか知ったから、
つらい人、沢山いること知ったから、
ひとの優しさ知ったから・・・・。


by ありんこ


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