私の母方の祖父は、蒔絵師(まきえし)でした、雅号(がごう)を武田行永と申します。
私が小さい頃亡くなっているため、私にはほとんど祖父の記憶はありません、
ただ、よく母が祖父の話をしてくれました、今思えば、亡き母は生活苦に喘ぎながら、祖父の存在が誇りであり、又生き抜くための心の支えであったような気がしてなりません、何不自由の無い生活から一転してどん底生活、私自身はそのどん底の中に産まれたため、その落差の苦しさがいかばかりのものかは知る由もありません。
母も亡くなっており、祖父の作品の数々、又芸術家として活躍の詳しい内容などは知る術もありませんが、ここに私の手元に数点の祖父の遺作がございます、当初掲載する気持ちにはなれませんでしたが、ある方のアドバイスによりあえて掲載することにしました。

祖父の作品の一つ、三段重ねの杯、繊細な金蒔絵、
芸術とは無縁であるはずの私でさへ、このみごとさには圧倒される作品です。
一度だけ、母が私のため使用してくれました、それは私達の結婚式の三三九度の時でした、使用するのはその日が来るまでとっておいてくれたのでしょう。
上の作品は、銀蒔絵巻きたばこ入れ、母が話してくれた記憶によりますと、
京都で行われたところのある美術展において賞をいただいたものとか、
しかし、今の私にはどんな美術展で、どのような賞をいただいたものかは、
知る術がございません。
左の作品は、印籠に描いたもの
ただ紐だけは私が後に適当につけたものです。
亡き私の両親、生活が苦しかった中で、いくばくかのお金に換えようと考えたことも一度や二度ではないはず、でも私に誇りと目標を残してくれた両親に心から感謝します。
天飾り つたは 素材の小路様よりお借りしたものです。
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上の作品は、私の好きな蟷螂(カマキリ)の図柄の乾湿の帯留めです。
横3.8cm 縦2.5cm
上の写真をクリックして頂くと、大きな写真が
ご覧いただけます。
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曲ー森の宮
盃は左より直径 12.7cm  10.8cm  9cm
帯留めの材質は乾湿(かんしつ)です、これは漆(うるし)の固まったものとか、母の話してくれた記憶によりますと、使い残りの漆を一つの容器に入れておきますと、自然に固まり、何年もかかって、大きな固まりになるため、色んな色の漆が幾層にもなって、とても美しい素材が出来るとか、これを切り取って帯留めに使ったのでしょう。